長谷川可奈 /HASEGAWA Kana

物語的に可愛いとされている女性と現代感のある女性のギャップに惹かれた

版画家

 

 

 

 

 













長谷川可奈 HASEGAWA Kana

出身-兵庫県

略歴
1986年 兵庫県生まれ
2010年 京都造形芸術大学洋画コース(版表現)卒業
2012年 京都造形芸術大学大学院修士課程芸術表現専攻版表現領域修了
2013年 個展/蔵丘洞画廊
2014年 個展/Gallery_R
2014年 第13回南島原市セミナリヨ現代版画展 朝日新聞社賞
2015年 EWAAC アーティストインレジデンス in UK/英国 ルートン
      EAST-WEST ART AWARD 2015 3位賞/La Galleria Pall Mall
2016年 第10回大野城まどかぴあ版画ビエンナーレ 入選
2021年 中林忠良-版画の系譜と展開-/ギャラリー恵風

受賞
2012年 クラクフ国際版画トリエンナーレ 入選
2015年 EAST-WEST ART AWARD 2015 3位賞/La Galleria Pall Mall 
2016年 第10回大野城まどかぴあ版画ビエンナーレ 入選

 

Interview

版画を始めたのはいつ頃ですか?

京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)の油画に入学し、3回生の頃に版画を始めました。
学生でのキャリアは大学院の修了までの4年間で、その修了展のために作ったのが、この《親指姫シリーズ》です。
本作品を制作するにあたって木版画について本格的に勉強し、初めて挑戦した技法もありました。


親指姫をテーマにしたきっかけは何だったのですか?

個人的な話ではあるのですがあります。母親は幼少期から絵本を読ませてくれていたのですが、なぜか「親指姫」だけ読ませてくれなかったんです。その理由は親指姫が誘導的な生き方をしているところを女の子には良くないと感じ読ませたくなかったそうなんです。
可愛いというだけでちやほやされ、連れ去られて困った状況になれば泣いてるだけで助けられ、お金持ちのモグラに拾われて贅沢な生活をしていたのに退屈だと我儘を言って、その場から救ってくれた燕に連れてもらった先の王子様と結婚するというその流れが、はたして女性の生き方として美しいのだろうかと。ただ成人になってから読んでみると、当時は女である自画像をよく描いてたこともあり、物語的に可愛いとされている女性と現代感のある女性のギャップに惹かれ、描きたいなという衝動に駆られました。
女の子が育っていく過程での葛藤みたいな要素を含む作品になりましたね。


童話での可愛いというイメージよりふてぶてしい表情で描かれているのは、やはり印象が良くなかったからですか?

現代の女性もそう生きざるを得なかったのかなというか、印象が良くなかったというよりも、どこかで納得して生きていかなければいけないというような解決の仕方になったという感じです。
他人から見られる女性像と自身が提示したい女性像に折り合いをつけて認めて自分を確立するっていうイメージでしたね。
ファンタジーをファンタジーとして見ないというスタイルの作品なので、鑑賞者の反応も面白かったです。


いまいま同じテーマで描くとしたら表現は違ってくると思いますか?

そうですね。現代はジェンダーに対する差別意識は随分と緩和されてきたので、昔に感じた違和感はなくなりつつありますよね。
私は幼少時代アメリカに住んでたんですよ。小学生になるタイミングで日本に戻ってきたんですが、当時は男女観にびっくりしたことがありました。それが十代終わりまで引きずってたのかなって思います。もう35歳になり子供もいるので、当時のような激しく反発する感情もないので、いま同じテーマで描くとしてもこういった作風にはならないと思います。
なので10年前当時の感覚を画面から感じていただければと思います。