松村咲希+大橋麻里子 2人展『Layer ~往復と集積~』

ZINE gallery初の2人展、松村咲希+大橋麻里子『Layer ~往復と集積~』を開催いたします。
京都造形芸術大学を卒業し、関西を拠点に活動する2人。大きくジャンル分けすると抽象画というジャンルではあるが、画面の中に活きる様々なレイヤーがその個性に繋がっています。
タブローのスタイルを一貫する松村は、今回ドローイングに初挑戦しました。
それに対しドローイングのスタイルを一貫する大橋は、未発表のタイプのタブローに挑戦。
コロナ禍には勿体ない2人の新作を、是非ご高覧ください。
     ZINE gallery 斧田唯志







2021年6月11日 〜 6月26日


-Session- (会期)
2021年6月
11日(金)、12日(土)、13日(日)、
18日(金)、19日(土)、20日(日)、
25日(金)、26日(土)

14:00〜19:00(最終日も同じ)

※アーティストの在廊日時は、ギャラリーのツイッターでご確認ください。

-Reception party- (レセプションパーティー)
コロナ拡大防止のため予定なし

-Eevent- (会期中のイベント)
コロナ拡大防止のため予定なし


-Artist- (アーティスト)
松村咲希 SAKI Matsumura

Interview


【どんな子供でしたか?】

相手が友達や両親関わらず、コミュニケーションが上手ではない子供でした。その分、当時はイラストを黙々と描いていましたね。 中学生の頃から、漠然と将来的に絵を描く仕事をしたいとは思っていたので、中学校の先生から美大の存在を教えてもらいまして、初めてデッサンもしました。高校生になってからは美術部に入りました。すぐ辞めましたが一年生の時に予備校も行きましたね。


【現在の作風になったきっかけは?】

大学生になってからは自分の心を癒すために、人物や動物をモチーフに油画を描いてました。京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)の卒業制作展って作品を販売するスタイルなんですが、私の作品はほとんど売れませんでした。この経験は、自分だけの為に作品を作っていた私に、外の世界へ踏み出してみようと思わせてくれて、現在の作風への転向のきっかけとなりました。大学院に入学してからは、今まで取り組まなかった事をしようと、考え方も技法も素材も正反対にしてみました。最初は何をしていいのかわからず、好きだったピーター・ドイグを真似て描いたりしました。こうして抽象画へ転向していきました。

【作品にどういう想いを込めていますか?】

鑑賞者にどう見せたいというよりは、鑑賞者に委ねていますね。多元的な絵だなと思いますので言葉にするのが難しく、いつも詰まります。AとBの間っていうのかな。例えば「平面と立体の間」であったりとか「白い部分は最後に塗られたようにも見えるが、下地の色」であったりなど、表現を特定しません。ですから、見る人次第で見え方が変わると思うのです。

【設計図や制作工程は?】

ペイントする部分、シルクスクリーンの部分、スプレーの部分など、同じ作品でも場所によって技法は違うので、最初から 設計図を作ります。ただ設計の段階では手描きはほとんどせず、最初からパソコンのillustratorで7割くらいまで作ります。 この時面白いのは、マウスパッド上で引いた線がillustratorによって自動的に補正された線に変り、さらにそれをタブローにする段階でアナログという手法をとっているので、少しずつ表現にズレが出ます。現代の絵描きの身体性だなあと思います。また、作品の変化については自分では保守的だと思っているので、敢えて変化を追求していこうとは心掛けています。 自分の制作の中で発見したことを、次の作品に少しづつ活かしたりしますね。


【日産大阪×FM802 FANKY CAR PROJECTのイメージを担当されましたね】

FM802ではFANKY CARが街中を走りPRします。開局当初は派手なカマロで有名でした。ボディーのビジュアルは近年、デザイナーが担当していました。それが今回の車種「キックス」からアーティストが担当することになり、第一弾が私でした。数年で別車種へ変わるそうですね。6月の数日間はショールームでお披露目されましたが、その後は街中を走っています。 こうやって街中でアートが走り、一般の方々にも興味を持っていただける機会になればいいなと思っています。

【今回の展示で意識や挑戦することは?】

まず、個展やグループ展ではなく、同じ母校の先輩でもある大橋麻里子さんとの2人展というのが良いです。展示までの 打ち合わせ段階で大橋さんの新作の途中経過を見て、潜在的に刺激を受けています。 それから大きなのは、初めてドローイングを発表するということですね。普通ドローイングといえば習作のような位置づけ なのですが、私の場合は最初からデジタルなので悩みました。そんな中、普段の作品を制作する過程で捨てる部分でも美しいと思える物があって、それを表現したいと思いました。ある意味、ドローイングのためのドローイングではありますが、今まで日の目を見なかったこぼれ落ちていた「絵にならなかった絵」をドローイングとして再現しているので、挑戦したことですね。

インタビュー: 斧田唯志  (2021.06)


-Artist- (アーティスト)
大橋麻里子 MARIKO Ohashi

Interview

【どんな子供でしたか?】

幼少期は家に籠もって絵ばかり描いているような子でした。それを見ていた母に勧められ、3歳からお絵描き(絵画)教室に 通うようになりました。同時期にピアノも習い始め音大へ行こうか迷った時期もありましたが小学校高学年の頃には美大に 行こうと決めていました。3歳から高校2年生まで同じ絵画教室に通っていましたが、技術的なことではなく、同年代の中で 描くことも必要だと言われ1年間は画塾に通いました。


【いつからプロの画家を意識し出しましたか?】

大学2回生の時に先輩から、自宅にスタジオを持っているから 一度展示をしてみないかとお声がけいただき、同期の井上裕葵さんと2人展をすることになりました。作品を制作するだけでなく、プライスリストや展示空間作り、プレスリリースの書き方など、展覧会を作っていくという一連の流れについて学びました。この展示を経験したことがきっかけでプロの画家を目指したいと思いました。

【作風は短いスパンで結構変わってきましたね?】

一貫して抽象画を好んで描いてきましたが、学部の頃はコンセプトよりも手が先に動いた作品が多く、先生にも指摘され課題となりました。多摩美術大学の大学院に入ってからは積極的にコンペにも出品し、半年後に「損保ジャパン日本興亜美術賞FACE2015」で優秀賞を受賞しましたが、当時はまだ手探り状態だったことや、副賞として美術館での展示を控え制作に追われていたこともあり、在学中にLa Foretシリーズのコンセプトをうまく言語化できないまま修了しました。有耶無耶にしたくない気持ちもあり、そこからいろいろな表現に挑戦したのです。神戸のGALLERY301で毎年開催している個展で作風が変わるのは実験的な意味もあります。去年のコロナ禍で毎日ドローイングを描きながら何のために描くのか、作品を通して伝えたいことは何かを改めて考え整理する時間を作りました。その中で生まれたMovementというシリーズは、日常的な手の運動として日記のように描きためているドローイングが元になっています。

【設計図や制作工程は?】

今まではイメージをキャンバスへダイレクトにペイントしていましたが、現在はパソコン上でデータを作り、プロジェクターで投影して描いています。パソコンでイメージを作るメリットとしては、考えを整理できると言うことと、描き込み過ぎを 予防できることですね。Episodeというシリーズは、実際に行った場所、見た物、体験したことなど、撮り貯めた写真をフォトショップで加工し、パソコンでコラージュしたイメージをキャンバスに落としていきます。

【今回の展示で意識や挑戦することは?】

以前から取り組んでいるEpisodeというシリーズは1冊の漫画を1枚のキャンバスに凝縮させたようなイメージで制作 しています。今回新たに挑戦したPlotという作品はEpisodeシリーズで凝縮した画像を分解したような作品です。 漫画のコマ割りは作者が読者の視点を誘導するように右上から左下へと流れていきますがこれは漫画の見せ所であり 特徴だと思います。ここに時間や空間の流れのようなものを感じ、作品に取り入れられないかと思いました。コマのモチーフの関連性が無かったり、時間軸を敢えて分解した上で再構成していますが、現在起こっている出来事は、無関係に思えることの積み重ねで、どこかで繋がっていると言う要素も含んでいます。鑑賞者それぞれの記憶に繋がるような身近なモチーフを 選択し受け取り方を限定しないような作品を意識しています。実験的ではありますが、子供の頃、漫画家になりたかった 憧れも潜在意識にあるのかもしれませんね。

インタビュー: 斧田唯志  (2021.06)