奥田誠一 個展『nest』

奥田誠一 個展 nest

ZINE galleryの第二弾の企画展として、奥田誠一の個展を開催いたします。
焦した和紙や錫を使った立体作品、砕いて着色した貝殻の破片を再構築する絵画、発砲ウレタンで作った彫刻、現場の土を切り取り畝らせるなど、ひとつの素材にこだわることなく各シリーズ化しているベテラン作家です。
昨年(2019年)、奈良市で開催された『学園前アートフェスタ2019』で私がアートディレクターをし、公募枠で応募して、予選を勝ち抜いた彼は、招聘作家に負けずとも劣らない素晴らしいインスタレーションで観る者の心を奪ったことは記憶に新しいです。
また今年の9月にギャラリー16、10月には芦屋画廊kyoto、そして今回11月に弊廊という、半径1km圏内で3ヶ月連続の個展に挑戦するなど、底知れぬパワーを見せつけてくれます。
そんな中でも直近展示作品の使い回しはしないポテンシャルを持つ奥田ワールドを、是非ご高覧ください。
     ZINE gallery 斧田唯志


2020年11月11日 〜 11月22日

-Statement- (ステートメント)

世界は不確実で事物・事象は常に揺らぎ ( 変化 ) を伴います。
完全な個は無く、流動的な全体の一部として存在します。
揺らぎ伴う世界の形態を、nest ( 群・巣 ) の性格を持つものと捉えます。
表現様々に、私の解釈による群体・巣状の景色を作ります。
どれかが鑑賞者の感性とリンクして、居心地のよい場 (nest) となれば幸いです。
     奥田誠一


-Session- (会期)
2020年11月
11日(水)、12日(木)、13日(金)、14日(土)、15日(日)、
20日(金)、21日(土)、22日(日)

15:00〜20:00(最終日も同じ)

※アーティストの在廊日時は、ギャラリーのツイッターでご確認ください。

-Reception party- (レセプションパーティー)
コロナ拡大防止のため予定なし

-Eevent- (会期中のイベント)
コロナ拡大防止のため予定なし

-Artist- (アーティスト)
奥田誠一 Seiichi Okuda
1962 年 滋賀県生まれ
1985 年 滋賀大学教育学部卒業

■主な展覧会■
個 展
2020 年 「fragments」/ 芦屋画廊 kyoto(京都)
2020 年 「surface – 消滅と存在の鬩ぎ合う処 -」/ galerie16(京都)
2019 年 「surface – 時空を超えて – 」/ 大庄屋諏訪家屋敷(滋賀)
2019 年 「colony」THE TERMINAL KYOTO(京都)
2018 年 「アートの今」展 / アートハウスおやべ(富山)
2017 年 「奥田誠一展」/ 守山市民ホール(滋賀)
2017 年 「 fragments of light」/ KUNST ARZT(京都)
2015 年 「奥田誠一展」/ 守山市民ホール(滋賀)
2015 年 「surface」/ KUNST ARZT(京都)
2014 年 「fluctuation」/ KUNST ARZT(京都)
2013 年 「流転 – constant change -」/ KUNST ARZT(京都)

■グループ展他 / 受賞■
2020 年 生野ルートダルジャン芸術祭 / 旧生野鉱山社宅及び空地にて個展(兵庫)
2020 年 第 1 回丹南アートコンペティション 奨励賞 / 春日文化ホール・上野記念美術館(兵庫)
2019 年 学園前アートフェスタ 2019 / 近鉄学園前駅周辺の民家及び空地(奈良)
2019 年 第 65 回全関西美術展【彫刻部門 全関西美術展賞第二席】/ 大阪市立美術館(大阪)
2019 年 第69回西宮市展【彫塑・立体部門西宮商工会議所会頭賞】/西宮市立市民ギャラリー(兵庫)
2018 年 農村舞台アートプロジェクト 2018 / 豊田市旭八幡町八幡神社にて個展(愛知)
2018 年 第 68 回 西宮市展 彫塑・立体部門 西宮市議会議長賞 / 西宮市立市民ギャラリー(兵庫)
2018 年 第 15 回特別記念 KAJIMA 彫刻コンクール【模型入選】/ 鹿島 KI ビル(東京)
2017 年 第 27 回 現代日本彫刻展(UBE ビエンナーレ)【模型入選】/ 宇部市野外彫刻美術館(山口)
2016 年 公募 2016 アートハウスおやべ現代造形展【特別賞】/ アートハウスおやべ(富山)
2016 年 第 5 回 あさごアートコンペティション【優秀賞】/ あさご芸術の森美術館(兵庫)
2014 年 第 68 回 滋賀県美術展覧会 立体部門 芸術祭賞【大賞】/ 滋賀県立近代美術館(滋賀)

Interview

Q. 作品は何種類かのシリーズになっていますね。どれも違った表現をされていますが、発想はどういうところから来るのですか?

A. 例えばまず和紙のシリーズですが、焚き火の跡に燃え残った紙を見た時に、焦げ跡があることによって通常の紙よりも存在感を感じました。それを堆積させると、もっと存在感が増すのではないかと思ったのがきっかけです。
最初は平面的な作品だったのですが、元々立体を作っていたこともあり、人物像も作るようになりました。
人型になると、その模様が個々の心の動きであるとか、日々の生活の記録が上書きされている様にも見えます。
像は空洞なので、儚げでありながら存在感を示してくれることから《surface》というタイトルにしています。
実在する人にモデルになってもらい、粘土で彫刻を作り、それをベースに和紙で張り子にしていくという手法です。
透明樹脂のシリーズですが、私は子供の頃から石が好きなんですよ。特に矢尻に使用されていた黒曜石が好きでした。ある時、樹脂を扱っていたのですが、少し大きさを整えようと叩き割ったら、それに似た様な表情になったので楽しくて細かく割り続け、拾い集めた物を並べてみると美しかったというのが始まりです。
黒いウネウネにビーズの花が咲いているシリーズは、野に咲く小さな花に惹かれてビーズで花を作ってみました。世の中には美しい物も気持ち悪くて醜い物もありますが、その判断基準は全て人間の勝手な価値観であり自然界ではそれらが共存しているということを表現したかったのです。
野外の地面を変形させたミステリーサークルの様な作品は、学生時代にクリストやヨーゼフ・ボイスの作品に感動して作り始めたのがきっかけです。形態のアイデアは案外単純で、球体状にひっくり返っている形は、タコ焼きを焼いている時に思いつき、十字の切れ目を入れて中央が盛り上がっているのはジャガバター、学園前アートフェスタでの地面が捩れている作品は板コンニャクがモチーフです。ヒントを得た形は食べ物ばかりですね。(笑)

Q. 元々は高校の先生をしながら制作をされていたと思うのですが、なぜ定年を待たず美術家一本でやっていこうと思われたのですか? 

A. 大学を卒業してから34間先生として学校に勤めて、2019年の春に辞めました。在籍中にも積極的に制作をし、頻繁に発表していました。ただ体調も含めいつまで活動できるか分からないじゃないですか。
というのも、6年前にKUNST ARZTで個展をしている最中に倒れ救急車で病院に運ばれて即手術したという
経験があるので、やりたいことはやれるうちにやっておきたいと思いました。

Q. 今回の個展に向けての想いを聞かせてください。

A. ここの会場のある場所は細い路地があり、人が行き交い、人でない者も住んでいると気配を感じ、その住処(すみか)を『nest』(巣)と捉えてギャラリーの限られた中で表現してみました。
間近で見たり、天窓から見える空を黒い板の反射越しに見たり、天井付近や棚の中などを探してみたりと、巣の中に潜む色々な存在を楽しんでいただけたら幸いです。

インタビュー: 斧田唯志  (2020.11)


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